7 May 2009

山形スキーツアー 6(鳥海山)

7日(木)晴れ 4:00に起床し紅茶とお菓子の簡単な朝食をとって4:30出発。誰もいない残雪の山は爽快で、ずんずん進むうちに調子が上がってきた。左には奈曽渓谷を側壁が取り囲み、一筋谷へと落ちる白糸の滝。谷が深くぞくっとした。
朝日の当たる雪の大斜面を黙々と進んでいると、過去に登ったムスターグ・アタの斜面を思い出した。悪天になったらルートを見失いそうだが、適度な間隔で赤旗が残置されており心強い。吹浦口、長坂道が途中で合流し、しばらくいくと御浜小屋に到着。
7:40文殊岳の登りでアイゼンとピッケルを出す。ところどころ岩が露出する雪尾根の登りが続く。下りを考え観察しながら歩くが、登り返しが予測される斜面が多く、うまい具合につなげられないように思えてきた。
8:40外輪山の一番高い場所である七高山に到着。風が強いので長くは休めない。スキーをデポし、新山の頂上へ。
岩で風を避けしばらく景色を楽しんでから下りにかかる。楽しそうに登ってくるボーダーのグループとすれ違った。ウエアがおしゃれで、楽しそう。斜面を物色するが、突っ込んではまるのはいやで結局スキーを背負ったまま御浜小屋まで歩いてしまった。さらに風が強くなり、小屋の手前では台風姿勢をしないと飛ばされそうなくらいの勢いになった。
小屋の手前でいよいよ滑降開始。大斜面を満喫していたら、あっという間に登山道との分岐に着いてしまった。雪面が徐々に狭まってきたところでふっと横を見たら、再び白糸の滝が目に入る。奈落の底に吸い込まれそうな威圧感に抗うべくスキーを脱ぎ背負って早々に尾根上に戻った。登山道を歩きながら、もっと良い斜面を選べば長く滑降できたと反省。とはいえ、なにより安全に下りてきたことに感謝して、登山口へ戻った。
5月の日差しは強く、駐車場で靴やスキーを乾かすことにした。しばらくうとうととしながら、太陽を楽しむ。13:30に移動を開始。返却は鶴岡になるので、先を急がねばならない。途中、道の駅で食べ物を物色するが、これ、というものがなく水だけゲット。15:40、返却時間20分前になんとか鶴岡駅に到着した。

車を返却し、下山後の楽しみに予約した知憩軒へ。いつか行きたいと思っていた、一日一組しか宿泊の予約をとらない鶴岡の農家民宿だ。電話を入れると、バスの本数が少ないのでタクシーを拾ったほうがいいとのアドバイス。
出迎えてくださったのは女将の光さん。汚い山道具を抱え恐縮していると「汚れていても気にしなくていいですよ、私も農仕事でどろだらけですから」と。ぜいたくにも、離れの一軒屋を貸していただく。鍵を渡され、自由に使っていいですよ、と。なんでも揃ったキッチンとお風呂、そして光さんの織物などの作品が置かれた部屋、お茶室まである。家族で何泊もしていく人もいるそうだ。料金は、素泊まり3500円、一泊二食付6000円と格安。半乾きの登山道具が乾くようにと、除湿機まで用意してくださった。深謝。早速お風呂を沸かし、ゆっくりとする。窓を開けると外から心地よい風が吹いてきた。

宿帳をめくると、4月に銀座にもオープンしたイタリア料理店アル・ケッチャーノの本店が近くにあることがわかった。奥田シェフがお客さんにこの宿を勧めているらしい。アル・ケッチャーノの夕食をフルコースで楽しみ、知憩軒で宿泊しおいしい朝食を楽しむ、という人もいるようだ。アル・ケッチャーノについては、山形駅の本屋でたまたま立ち読みして知ったのだが、奥田シェフは全国に名が知れた名オーナーシェフ。各地からこのお店を目当てに訪ねてくる人が大勢いるのだという。奥田シェフと光さんの共通項は、地元の食材を大切にして提供していることだろうか。地方にあって、その価値を相対的に把握している、すばらしい人たちだと思う。
まだ明るい18:00から母屋にて夕食をいただく。この地でとれた食材をふんだんにつかった料理のおもてなし。若くちゃきちゃきとカッコの良いお嬢さんがそれぞれの食材について説明してくださる。女将さんの活動に賛同して働いているスタッフの方かなあと聞いてみると、光さんのお嬢さんであった。母娘二人で切り盛りしているのだそうだ。
まずは、炭火でしいたけ、アスパラ、弁慶めしを炙る。前菜は、うど、こごみ、タラノメ、こしあぶら、かぼちゃ。さらに、わらびのたたき、さわらだいこん、にしんの煮付、くろごまどうふ、こうやどうふ、うるいの漬物、うどのきんぴら、おふのみそしる、そしておにぎり。日本酒をなめながら、ひとつひとつ味わっていただいた。これこれ、こういうのを食べたかったのです。もう、最高に幸せ!最後の〆はわらびもちのデザート。

食事が終わるころ、光さんが絶妙なタイミングでお声をかけてくださる。暖かい笑顔と穏やかな語り口調に引き込まれる魅力あふれる女性だ。少しの酒で酔っ払ってしまう私の質問につきあって、いろいろと教えてくださった。嫁入りして20代の頃から嫁ぎ先の親を長く介護してきたが、介護が一段落し、やりたいことをしようと思い立ち宿を始めたのだという。食が廃れたら日本の国もだめになってしまうと考え、農家をやりながら(彼女は百姓という)民宿を営む。できれば、訪ねてくる人に農家の日常も見て欲しいと考えてのこと。しかし現状は厳しく、小規模な農家は経営が困難になり将来が心配。そんな中で、少なくとも自分自身が楽しむこと、それが一番重要だと思っているそうだ。どっしりと構えた風貌のとおり、自然体だが強い意志と覚悟が感じられる。どこから風がふいても、しなやかにかわしながら、根を深く伸ばしてぶれない大木のようだ。

お嬢さんのみゆきさんは爽やかで美しく、都会を歩いていても人が振向きそうな雰囲気。外へ向かって輝くような美しさ。でも、私にとって日常を脱した旅が大事であるように、お嬢さんも外へ旅に出たいと思うときがあるのではないだろうか。帰るまでに聞いてみたいと思った。


<行程> 4:30駐車場発~6:00御浜小屋~6:30御田ケ原分岐~7:00七五三掛から8:40七高山~9:10新山頂上~12:10駐車場下山

<交通費> ガソリン代 655円(酒田~鉾立山荘~鶴岡)、タクシー 3750円(鶴岡駅~知憩軒)

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