21 November 2009

地平線会議

21日(土)晴れ ぽかぽかと暖かい一日。神楽坂で大久保由美子ちゃんと待ち合わせ。以前は毎週のように一緒に山へ通っていたが、ここ数年ゆみは子育てに専念していて久しぶりの再会。何事も並みはずれた集中力でやり尽くす性質は、子育てにも表れていると思う。

私が高所登山を心から楽しいと思ったのは、ゆみが誘ってくれたムスターグ・アタがきっかけ。夏のハイシーズンをずらして遅めの9月に入山し、私たち以外には2パーティーだけの静かな山だった。悪天が続いた後半はその2パーティーも下山してしまい、最終アタックの段階で残ったのは私たち二人だけ。7000メートルの山に女二人の静かで贅沢な山登り。サミットプッシュでは、C1で降雪と雷で恐ろしい思いをし、不思議な足跡を発見し、二人だけで新雪をラッセルして進んだ。アタックの日は快晴。穏やかな頂上の景色と、下山後のすべてが輝いて見えた感激(これは不思議な体験で、下山の翌朝目覚めたときにまわりに存在…石ころや風や花…が歓喜でブルブル震えているということを感じたのだった。素粒子の振動のように。おそらく脳内麻薬の影響かとも思うけど。)は、その後高所登山に惹かれるようになった私の原体験だ。独立心と深い優しさを併せ持っているゆみは、絶好のパートナーだった。

今回は地平線会議の30周年記念集会に参加するため、少し早めに会って神楽坂のブルターニュのクレープで昼からワインを飲みながらお互いの近況報告。第二子を育てている彼女だが、今年の初めからトレイルランにはまっている…はまっているなんていうものではなく、またこれもすごい集中力で、10月のハセツネカップをなんと11時間59分で走り抜け13位に入賞した。驚異的である。初ロードだった秋のフルマラソンも、3時間台後半で走るというのだから、片手間とはいえない内容だ。そういや私も10年前のハセツネカップで女子総合3位になったことがあったな。それでも14時間29分だったのだから、全体のレベルがぐぐっと上がった今のレースだったら20位にも入れないってことか…いやはや。

12:30の開演に合わせて牛込箪笥区民ホールへ。まず受付で楽しみにしていた長野亮之介さんの「月世見画報」と、滝野沢優子さんの地平線犬クラブエコバッグをゲットしてから会場へ潜入。

当日のプログラムは、ダンスのオープニングから、Part1「自然に生きる、野生を食う(松原英俊さん、服部文祥さん、関野吉晴さんの対談)」、Part2「縄文号ができるまで(関野吉晴さん+黒潮カヌープロジェクトスタッフのプロジェクト報告)」、品行方正楽団の演奏(ケーナや和太鼓三味線などのミックス演奏)、Part3「あれから30年 ぼくらの旅の現在地(岡村隆さん、樫田秀樹さん、白根全さん、山田淳さん、広瀬敏道さん、青木明美さんのセッション)」、Part4「記録すること、続けること(江本嘉伸さん、岸本実千代さん他リレートーク」、品行方正楽団、ダイナミック地平線という内容。

どれも聞き逃せない陣容。その中で、なんといっても残像が強烈に残っているのはPart1「自然に生きる、野生を食う」のパネルディスカッションだ。『現代における"動物としてのヒト"の生き方とその具体的な方法論』というテーマ。鷹匠として日々生活している松原英俊さんにとって、動物はすべて獲物かまたは同士であり観察の対象ではないのでとにかく発言が際立っている(というか想像を超えている)。淡々と語られる日々の生活に根差した言葉は(「ハクビシンは猫に近い味がする」とか「ねずみの刺身も食べる」とかを奇をてらうわけではなく”ふつう”のこととして語る…)圧倒的。深くテーマを追求し続ける、私にとってはあこがれの行動者である関野吉晴さんと服部文祥さんは、観察者+表現者という立場の行動者である以上は、このテーマにおいて松原英俊さんとは次元が違う。マチゲンガ族と行動を共にした経験を持つ関野さんが「知人や編集者からの勧めもあり、あるときから実行者から観察者にかわった」と振り返っていたのは印象的だった。深い思考の上にサバイバル登山という新たな分野を開拓している服部文祥さんは、サバイバル登山に安住せずにさらに深化を模索していて泣けるほど正直だ。一流の行動者であり観察者である彼らだからこそ、異質であるがゆえにすごく魅力的で刺激的で考えさせられる発見に満ちたセッションになっていた。

幸運にも、会場では服部文祥さん自らが「狩猟サバイバル(みすず書房)」を先行販売していたので、大喜びで購入。直筆サインとおまけにいつもの辛口嫌味も言われつつ、再会を楽しんだ。すばらしい観察者であり、かつ行動者であることを志向する服部さんの文章は、客観的事実とともに内面描写も詳細で発見とともに考えさせられることがたくさんある。

会場では、実行委員長の長野亮之介さんはじめ顔見知りのスタッフが裏方で動いている。5年前の25周年より以上に洗練されている印象で、裏方の労力はどれほどかと想像してしまう。お客様としてとても居心地の良い会、ということは相当の準備が必要なはず。久しぶりに、高野孝子さんや高野さんの事務所で一緒に働いていたふみちゃん(今は会津の民宿田吾作の若女将)+息子と再会を喜び合う。日山協でお世話になったFさん、遠征時にお世話になったK先生…。なんだか、自分の過去の歴史を振り返るようでもあった。ばらばらと行動しているようで、実は一つに繋がっているのか。

優子さんとは再会を約束して会場を後にした。ゆみとは興奮冷めやらぬまま再びお酒を飲んで語り尽くして解散。

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