13 February 2010

韓国アイスクライミング合宿3

13日(土)雪のち曇り 8:00誰ともなく起床。窓の外を見ると真っ白。昨晩から降り始めた雪が20センチくらい積っていた。みんな大喜びで写真を撮りまくっている。

太さんが買ってきてくれたサンドイッチと豆乳で朝食。サンドイッチはピタパンのような厚めのパンに肉や野菜が挟んであり不思議な食感だが、美味しかった。
10:00 お世話になった山屋御用達の宿”ヨウル”のご主人、Seu Kaong Ho氏にご挨拶して宿を出発。
今日は、去年初めて連れてきてもらったハンデ氷場へ向かう。到着すると、朝ソウルを出発したクライミング仲間のハンさんとイーさんが先に到着していた。
ハンデ氷場は、氷のパートが2つに分かれていて、左側の氷は自由にリードが可能。右側の50×2ピッチの氷は、1日1組しか登れないのだが、なんと田さんが「今回の仕上げに」と事前に予約をしてくれたという。しかし、指差されたそのルートを見上げると、とても自分にリードできるような代物ではなく、フォローでも登れるかどうか、といったルートだった。「リードは無理だわ」ということで、田さんリード、私がセカンド、ヤンさんがラストで登ることになった。
実は、なにより核心だったのは、アプローチ。数日暖かい日が続いたらしく、通常凍っているはずの取りつきが湖となっていたのだった。太さんが強引に頼み込んでくれ、氷場を管理しているスタッフが簡易渡し船を遠くから運んできてくれた。
11:00登攀開始。田さんはさすがに安定した登りだ。右上してバーティカルになるあたりから慎重になったので、核心部の場所が読める。ビレイオフの後、しばらくして登っていいよとコールがかかった。出だしは、サクサク登れたが、見ていたとおり斜度が強くなってくるあたりから一気に難しくなる。思った以上に腕の消耗が激しく、一振りしてはシェークしなければパンプしてしまうほどで、フリーを真面目にやっていなかった自分を後悔し、文字通り泣きが入りそうになった。しかし、疑問に思っていたN-BODYに型を変えると、明らかに消耗が抑えられるのがわかる。目からウロコ。厳しい状況になってはじめて、今まで腑に落ちなかったものが一気に明快になる。バーティカルで威力を発揮するギア組みと型。そうでなければいけない理由。経験しなければ気付けないものだ。
2ピッチ目。氷の状態があまり良くないようだ。出だしから回り込むように登るので、リードをする田さんの登る姿は見えないが、ロープの進み具合を見ると、けっこう苦戦しているように感じられる。おそらく、慎重にリードしているに違いなかった。しばらく時間がかかってから、ロープがスルスルと引かれた。コールが届かないようだが、「2回引っ張ったら登っていいよということだから」という事前の打ち合わせどおり、ロープが引っ張られた。

1ピッチ目にかなり苦労したので登り始めは気が重かったが、気持ちを奮い立たせる。いずれにせよ、セカンドなんだし、思い切り登るしかないのだ。幸い、ビレイ点で十分レストできたようで、腕のパンプは回復している。出だしからN-BODYを駆使し、消耗を抑えて登ることに慣れてきた。しかし2ピッチ目は高度感も出て、露出度が高い。おまけに少しかぶった氷まであり、かなりプレッシャーを感じながらの登りになった。

ビレイポイントにいる田さんが見えるあたりまで到着した。セカンドとはいえギリギリだっただけに、登った後の充実感はひとしお。久しぶりに「登ったあ」という感覚を味わう。
普段はあまり自分の写真を撮らないのだが、田さんが「カメラかして」と私の姿を撮ってくれた。
15:00 ヤンさんも到着し、終了点でパチリ。左から田さん、私、同い年のヤンさん(笑いのツボが一緒のヤンくんはビレイ中終始冗談を言っては笑わせてくれた!多分緊張する私の気持ちをほぐそうとしていたんだと思う)。

力以上のルートに行けるのは、仲間のお陰。田さん、ヤンさんには本当に感謝だ。自分ができることしかやってないと伸びシロも少ないが、こういうルートに出ると、一気に学びが広がっていく。久しぶりに味わう感覚だった。

懸垂下降で下りると、太さんから「随分成長したじゃない!トレーニングがんばったでしょう?」と言われるが、彼らのトレーニング量を思うと恥ずかしすぎて答えられなかった。

帰路は、数台の車に分乗し、グルメなハンさんおススメの老舗冷麺店に立ち寄り。これも、なんだか日本の山屋と同じパターン。老舗冷麺店では、そば団子やそば湯が出されどれもウマい。実は旧暦の大みそかである今日は、冷麺が年越しそばなんだよ、と太さんが教えてくれたのだった。

12 February 2010

韓国アイスクライミング合宿2

12日(金)曇りときどき降雪 8:00に起床すると、既に洗濯物を済ませた朴さんが、服をオンドルの床に広げて乾かしている。我々も片付けを済ませ、ギアを車に詰め込み、朝食と昼の買い出しのため車で5分ほどのところにあるミョンドンの市街地へ。
まずは24時間オープンしている地元の定食屋で朝食。メニューはハングルでよくわからない。ご飯とスープとおかずのセットが食べたいと希望を伝えると、Jeonさんがプルコギと卵焼きをオーダーしてくれた。合わせて8500ウォン。なかなかのボリュームなので、分けて食べることに。
昼ごはんは、近くのセブンイレブンで辛ラーメンとお菓子、ミネラルウォーターをゲット。日本の山行と同じような感覚だ。カップラーメンは1,000ウォン、ミネラルウォーターは500ウォン。氷場へ戻る途中ガソリンも入れておく。Jeonさん曰く、韓国は高速代は安いが、ガソリンが高いのだとか。何リットル入れたか聞かなかったけれど、満タンに入れてもらって36,000ウォンだった。
10:00からアイスクライミングのトレーニング開始。ひたすら、N-Bodyの練習。傾斜が緩いところでは、その効果はいまひとつ実感できないのだけれど、傾斜のきついところやハング越えでは、N-Bodyで登ると楽に越えられるため、威力を実感。無駄な力を使わないので、持久力がアップしたような気になるほどだ。お昼は事務所の暖かい小屋をお借りしてラーメンをすすりながらまったりし、午後も再び登り込み。夕方15時頃に上がり、お世話になった事務局のハンさんとパクさんにお礼。次のエリアであるカンヒョンへ向けて移動を開始した。
実は、旧正月を前に田舎へ移動する車のため高速は渋滞。ソウル市街へ北上している間はまだ空いていたのだが、途中イチョンインターチェンジから下りに入ったとたん、激混みに。ゆっくり進む車の中で、山、仕事、人生…いろいろな話をする。Jeonさんは2月の後半に韓国からお客様を連れて八ヶ岳を登りに行くということで、赤岳鉱泉の予約や名古屋空港からのバスチャーターなど手配のお手伝いも。20:30 カンヒョン着。高速代金は8,800ウォンだった。

カンヒョンはスポートクライミングのエリアとして有名な場所で、13aのシンドブリルートなどがあるそうだ。ヨウルというクライマー御用達の宿へ投宿。Wonju Climbers ClubのSeu Kang Ho氏が経営する宿だそうで、入口にはフリーやヒマラヤのクライミングの写真が多く飾られている。
近くの定食屋で、夕食をとって今晩到着予定の太さんチームを待つ。携帯で「高速激混みで遅くなりそう!」と連絡が入ったので、オンドルの床でうとうとしながら待っていると、夜中12時過ぎ太さんの大きな声が聞こえてきた。

元気一杯の太さんは大きな荷物とともに到着。再会を大喜びし、太さんのクライミングクラブの後輩を2人を紹介してくれた。女性クライマーのコンさんと同年代のヤンさん。コンさんはもともと山歩きが好きで、最近クライミングをやりだしたのだそうだ。ヤンさんは日本に住んでいたことがある、ということで、簡単な日本語を話してくれた。

もちろん、山屋が到着したらやることは決まっていて、お酒とツマミがザックから出てきた。ソジュで乾杯し、近況などをお話。2時頃まで盛り上がってから就寝。

11 February 2010

韓国アイスクライミング合宿1

11日(木)曇りときどき雨 5:30新宿発のリムジンバスで羽田へ。14日まで、韓国の田さんと太さんを訪ねてアイスクライミング合宿に行くのだ。彼らとは、去年の出会い以来、富山で再会したり、私の家に泊まりに来たり、なんやかんやとやりとりが続いている。お土産も買い込み、なんだか里帰りの気分。彼らに欲しいものを聞いたところ「アルファー米買ってきて」ということで、ICIで20袋を買い込んだら「今度はどこに遠征予定?」と聞かれてしまった。尾西食品㈱が韓国で販売したら売れるだろうな、と思うのだけれど、やっていないのだろうか。

アックスや個人ギアを入れて19キロの荷物なので、らくらくチェックインができた。羽田の国際線乗り場は小さく、イミグレに時間がかかる。羽田から国際線に乗るときは、時間的余裕を持ってきた方がいいようだ。

無事搭乗し、日経新聞を所望すると「(ANA便)1月から新聞サービスは中止しました」と言われてしまった。経費節減か。ゆっくり新聞を読みたかったのに残念。8:15に離陸するとすぐに朝食となった。

アナウンスでは、金浦空港は雪のため引き返す可能性があると言っていたが、10:30無事到着した。窓の外は真っ白だ。荷物を回収し外へでると、田さんが笑顔で出迎えてくれた。

「このまま直行するよ!」ということで、車に荷物を詰め込み雪の中高速を南へ。田(Jeon)さんは同じ世代のクライマー。食堂の女将クライマー太(Tae)さんの先生にあたる。自らクライミングスクールを運営し、時間を作って中国やパキスタンの壁を登ったりしている壁屋さんだ。「日本で世話になったから、今回はすべてこっちに任せてよ」などと言ってくれるが、さすがにお世話になりっぱなしではマズイ。

韓国の氷は例年より早く12月初旬から良く凍りはじめ毎週のように通っていたという。ここ数日暖かいので、コンディションはどうかと心配している。今夏の予定について話を聞くと、いつも一緒に登っているパートナーが去年事故に遭い、今年は海外登山の予定がないのだという。そのかわり、国内で面白い計画を温めていて(これはかなり面白い!)、そのために4か月前からトレーニングを始めたのだとか。そのときどきの状況に合わせて目標を決め遊ぶことができる柔軟性は、さすがだと思う。
その他、雪岳山四大氷曝(ソスン、テスン、ククサデプそして有名なトワンソン)の話など。トワンソンは入山規制があり、事前に申請が必要だが、週末はとにかく人が多くとんでもなく大きな落氷があるなど危険なのだそうだ。平日に登れないのなら、トワンソンには行かない方がいいよ、とアドバイスを受ける。そして、女将クライマーの太さんが去年から目標に掲げていたトワンソンを1月に登ったと教えてくれた。すごいなあ!
14時前にOhangのサービスエリアで昼食。キムチうどん(3,500ウォン)を食べてさらに南へ。15:30Yeongdongインターチェンジ(空港から8,700ウォン)を下りて下道を行く。

16:00頃にソウルから南へ約200キロのところにある松川氷場に到着した。ここは設営されてから3年目の韓国最大の人工氷壁。川に面した岸壁幅約100メートル×高さ約80メートルの間に、4種類の氷壁が広がり、それぞれ「りんご」「梨」「ブドウ」「柿」という名前が付いている。川の水をポンプで吸い上げて、上から流して氷を作っているのだ。利用料は本来1人あたり10,000ウォン(約800円)だが、直接施設には支払わず、かわりに地元自治体が発行している商品券を購入し、地元でお金を落とすシステムになっている。建設費や維持費も自治体が負担し、地元にとっては大きな観光資源となっているようだ。施設内には出店のテントがいくつも並び、臨時のカフェまである。週末は多いときで400人程度人が集まるといい、出店も大繁盛なのだろう。
到着して事務所に挨拶し、早速準備をして登り始める。トップロープのみ許可されているということで、それぞれの氷壁の横に梯子や縄が設置され、上部へ登りロープをセットすることができる。1月に開催されたノースフェースカップの名残であるバウンダリーのペンキが残っていたので、その中のハング越えのあるルートを登ることにした。

今回は悩んだすえ、アックスはグリベルのマトリックステック×シモンのナジャを持参。八ヶ岳や四十八滝の急峻でない氷のリードでは、両手にマトリックステックを使うと氷から外れやすく恐い感じがしたためで、今回もリード練習をする気だったのでこんな中途半端なギア揃えをしてしまった。しかし、バーティカルに近い氷を登ると、氷に刺したナジャがなかなか抜けないので逆に力を消耗することに気付かされる。おまけに登り方は、「去年教えたN-body(N字を描くように登る韓国式クライミングスタイル)ができてないじゃない」とダメ出しが。「N-bodyは効率良く力の消耗を抑えてスピーディーに登るには必要だよ」と言われ、何度も練習することとなった。しかし、この時点ではまだその威力に半信半疑、『他の登り方だっていいんじゃないのかな』くらいに思っていたのだった。(3日目にN-bodyの威力に開眼することとなるのだが…)。
暗くなってからもナイター用の明りが灯り登ることができる。適当に切り上げて、事務所スタッフである13クライマー&アイスコンペクライマーの韓(Han)さんとデグ市でパワークライミングセンター(辛雲善選手など数多くの有名クライマーを輩出してきたジム)を運営していた朴(Park)さんと近くのレストラン”パクダルカドン”で夕食。イカチョンゴル(鍋)を囲んでクライミングの話を伺いながら夕食となった。
店の女将さんは日本に住んでいたことがあるということで、とても親切にしていただく。ナムルやキムチや各種漬物、煮物などなど美味しい食事に大満足。
夜の宿をどうしようか悩んでいたところ、朴さんから借りている部屋に来ればいいとお声掛けいただき、おじゃますることに。ワンルームのオンドルにバス・トイレ、キッチン。みんなで合宿さながら雑魚寝。湿った装備を乾かすことができるオンドルの床はとても便利だ。夜はアックスやギアについていろいろ質問。恥ずかしながらアイスアックスによって、ドライに使えるものと使えないものがあることをこのとき初めて知ったのであった。